「too ○○ to △△」構文、英語の授業では『形は肯定文だけど、「○○すぎて△△できない」という否定の意味になる』と教わった記憶がある。何の疑いもなくそのまま覚えていたのだが、大人になった今、この和訳に怒りを抑えられない。
- The river was too wild to swim across.
(川はあまりに荒れ狂っており、泳いで渡ることはできなかった。) - Melos was too exhausted to take another step.
(メロスは疲れ果てていて、もう一歩も歩くことができなかった。)
ここまではわかる。師匠(学校の先生)の教えどおりだ。しかし、次の文章はこう訳される。
- It is too early to give up hope!
(希望を捨てるには早すぎる!)
「…は?」
何で急に肯定文?「早すぎて希望を捨てられない」じゃないんかい。否定文で訳すんじゃなかったんかい!
まぁ確かに、「早すぎて希望を捨てられない」は文章として不自然だし、「希望を捨てるには早すぎる」が正解なのはわかる。しかし、ある時は肯定文、ある時は否定文として訳すダブスタっぷり。その場のシチュエーションや文脈によって訳をころっころ変えてんじゃねぇ。そのわがままな振る舞い、お前は暴君ディオニスかよ。
というわけで、too ~ to 構文を掘り下げ、これまでの解釈を変えてやると決意したのだった。
語順の逆転問題
この構文、訳す際に語順の逆転が起こるのも許しがたい。否定形の訳は左から右の順なのに対し、肯定文のそれは右から左となっている。
- The river was too wild to swim across.
(川はあまりに荒れ狂っており、泳いで渡ることはできなかった。) - It is too early to give up hope!
(希望を捨てるには早すぎる!)
訳にかける時間がたっぷりあるなら気にならないのかもしれないが、日常会話ではそうはいかない。考えている間に話は進んでしまうのだ。
また、脳内メモリを喰うという点においても問題だと個人的には感じている。先に too を聞いた時点で、「この後に to が来た場合は否定としてとらえねば…!」といちいち気を張る状態が続くのだ。なんというか、手持ちのカードを頭の片隅に入れておいて、揃うタイミングを待つトランプゲームのような緊張感が付きまとう。
もっと素直に、聞いた順に解釈していった方が平和なのではないだろうか。
構文ではなくただの文
つまり、
- The river was too wild to swim across. → 川はあまりに荒れ狂っている。泳いで渡るには。
- It is too early to give up hope! → あまりに早すぎる。希望を捨てるには。
ととらえた方が語順の逆転も起きない上、否定・肯定の判断も不要。瞬時に理解しなければならない会話であったとしても、理解が追い付く。
「覚えておかなけらばならない構文」という呪縛からもこれで解放される。
too ~ for … to も同じこと
too ~ to とは別構文として教わった too ~ for … to も同じように解釈できる。
- That town is too far for me to visit.
(あの町は遠すぎる。私にとっては。訪れるには。) - This waiting time is too long for me to stay.
(この待ち時間は長すぎる。私にとっては。待つには。)
目的語が消える重複禁止の法則
ちなみに、上記の例文にある visit は基本的には他動詞なので、本来は visit の後ろに訪ね先を示す必要がある。しかし、すでに明示されている場合は重複してしまうため省略するというのが英語のルールなのだそうだ。
- That town is too far for me to visit
that town. - That coat is too expensive for me to buy
it.
ただ、注意点がひとつあって、ここで重要なのは「重複しているかどうか」を判断することで、すべての文で必ず省略するというルールではない。言い換えれば、重複しない場合は省略してはいけないのだ。
たとえばこの場合。
- It is too warm to wear the coat.(気温が温かすぎる。コートを着るには。)
最初の It は天気(気温)の話。文末のコートとは一致しないため省略できないが、仮にこの文章が出てくる前にあるコートの話で盛り上がっていた場合、
- It is too warm to wear
it.(そのコートは温かすぎる。着るにはね。)
冒頭の It はコートのこと。文末の it と重複するため、後ろの it は省略する。it のように、その意味が動的に変わる場合は文脈に応じて調整する…ということなのだ。
重複についてはこの記事でも書いた。
実践:瞬間英作文
使うかもしれない例をいくつか。
「こんなのアホらしすぎて、私には付き合ってられない。」
「これが我々の予算だ。プロジェクト全体でこの金額でどうだ?」
「本気か? このオファーは、議論することさえバカげているほど侮辱的だぞ。」
Are you serious? This offer is too insulting to even discuss.
「その頼みは危険すぎて、受け入れられないよ!」
どうでもいい編集後記
まったく皮肉なものだ。おそらく、「より意味を理解しやすいように」と否定形の訳が構文として英語教育に取り込まれたばっかりに、逆に理解しづらくなってしまうなんて。
まぁ、拗らせ王、暴君ディオニスも改心して友情を肯定したことだし、私の解釈も肯定文に落ち着いたことだし、めでたしめでたし…ということで。